京野菜の機能性

〜 健康維持・老化防止に寄与 〜


機能性の分析

 独特の風味、香り、彩りを持った京野菜。
 最新の研究により、健康維持に寄与する機能性成分を豊富に含むことがわかってきました。

 現在流通する一般的な野菜は、大量生産・大量消費に対応し、病気や害虫に強く栽培しやすいこと、収量が多いこと、消費者の好みに合わせくせが無く食べやすいこと等の特性を追求して品種改良が進められてきました。
 一方、伝統野菜である京野菜は、古来からの野菜の特徴を色濃く残し、栽培が難しく収量が少ないなどの難点がある反面、一般野菜には無い独特の風味や香り、彩りを持ち、それらが京野菜の価値として高く評価されています。
 京都府立大学や京都府農林水産技術センター等の研究機関では、このような京野菜独特の個性を形づくる味や香り、色素等の成分に注目して研究を進め、京野菜の健康維持に役立つ機能性が明らかにされてきました。

品目 辛味・香り成分
(殺菌、がん予防)
抗酸化性 低カロリー性 水溶性食物繊維
メロン × × ×
桂うり ○○○ × ○○○
西洋にんじん
京かんざし ○○○
えだまめ
紫ずきん ○○○
白菜 ×
みず菜 ○○
青首だいこん × ○○
辛味だいこん ○○○
佐波賀だいこん ○○ ○○
聖護院だいこん ○○
白ねぎ ×
九条ねぎ ○○
堀川ごぼう ○○○

○○○:強、○○:中、○:弱、×:検出なし、−:未試験

抗酸化性

一般野菜に比べ抗酸化性が高い京野菜

 抗酸化性とは、生活習慣病や老化の原因となる活性酸素を除去する働きです。
 京野菜の多くの品目は、「抗酸化性」が高く、老化や生活習慣病等の原因となる活性酸素の働きを除去する力が強いことがわかってきました。

 呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、活性酸素となりウイルスや細菌などから身を守るのに利用されます。しかし、ストレスや紫外線、タバコ等が要因となり、過剰の活性酸素が発生すると、体内の有機物が酸化され正常な機能を失うことにより、老化や生活習慣病、がん等の様々な病気の原因になるとされています。
 食品中の抗酸化物質は、過剰な活性酸素の働きを除去することにより、様々な傷害から私たちの体を守り、健康維持や病気の予防に役立つ働きがあると考えられています。
 京都府農林水産技術センターと京都府立大学が、京野菜の抗酸化性を分析・調査したところ、堀川ごぼう、花菜、紫ずきんなどで高い抗酸化性が確認されました。

(2017年3月27日更新)

発がん抑制

桂うりの香気成分、佐波賀だいこん等の辛味成分の発がん抑制作用

桂うりの香気成分(MPTE)

大根の辛味成分含有量

 京都府立大学等の研究により、特徴的な風味を有する京野菜が一般的な野菜に比べて生物的抗変異原性が高いことが明らかにされ、発がん抑制作用のある成分として、佐波賀だいこん等京都の伝統的な大根に多く含まれる辛味成分(MTBITC)や桂うりの香気成分(MTPE等)が同定されるとともに、その働きについて試験管レベルから動物、ヒト試験まで、多くの研究が行われています。

詳細情報

Antimutagenic; differentiation-inducing; and antioxidative effects of fragrant ingredients in Katsura-uri (Japanese pickling melon; Cucumis melo var. conomon)

 桂うりに含まれる6種類の香気成分の同定と化学構造の決定を行い、そのうち、メチルチオ酢酸エチル(MTAE)および酢酸3-メチルチオプロピル(AMTP)は紫外線誘発突然変異の抑制作用を、メチルチオ酢酸エチル(MTAE)および3-メチルチオプロピオン酸エチル(MTPE)は、大腸がん細胞の分化誘導作用を示した。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20801232
Nakamura Y, Watanabe S, Kageyama M, Shirota K, Shirota K, Amano H, Kashimoto T, Matsuo T, Okamoto S, Park EY, Sato K., Mutat Res., 703, 163-168(2010)

3-Methylthiopropionic Acid Ethyl Ester, Isolated from Katsura-uri (Japanese pickling melon, Cucumis melo var. conomon), Enhanced Differentiation in Human Colon Cancer Cells

 桂うりのヘキサン抽出物画分をヒト大腸がん細胞の分化誘導を指標としたスクリーニング法で検定すると効果を示したことから、活性を指標として成分を精製し、メロン様の香気成分3-メチルチオプロピオン酸エチル(MTPE)を同定した。

http://pubs.acs.org/doi/pdf/10.1021/jf072898i
Yasushi Nakamura, Yuko Nakayama, Hitomi Ando, Atsuo Tanaka, Tomoaki Matsuo, Shigehisa Okamoto , Brad L. Upham , Chia-Cheng Chang , James E. Trosko , Eun Young Park and Kenji Sato, J. Agric. Food Chem., 56 (9), pp 2977–2984(2008)

Antimutagenic and Anticarciogenic Properties of Kyo-tasai, Heirloom Vegetables in Kyoto

(総説)特色ある風味を有する京野菜は、生物的抗変異作用が強く、伝統的な大根に多く含まれる4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネート(MTBITC)と桂うりに多く含まれる3-メチルチオプロピオン酸エチル(MTPE)は、動物実験による発がん抑制作用と試験管レベルでヒト大腸がん細胞の分化誘導作用を示した。

http://ci.nii.ac.jp/els/110006781780.pdf?id=ART0008724483&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1397551577&cp=
Nakamura Y, Matsuo T, Okamoto S, Nishikawa A, Imai T, Park E Y, Sato K., Geines and Environment,Vol.30,No.2pp.41-47(2008)

Comparison of the glucosinolate-myrosinase systems among daikon (Raphanus sativus, Japanese white radish) varieties

 佐波賀だいこん等の京都の伝統的大根は、普及種の青首ダイコンと比べ発がん抑制作用のある辛味成分4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネート(MTBITC)を2.0~11.5倍多く生成する。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18345631
Nakamura Y, Nakamura K, Asai Y, Wada T, Tanaka K, Matsuo T, Okamoto S, Meijer J, Kitamura Y, Nishikawa A, Park EY, Sato K, Ohtsuki K., J Agric Food Chem.23;56(8):2702-2707(2008)

京都の伝統野菜の生物的抗変異原性

(シンポジウム要旨)京野菜の風味が濃厚であることに着目して抗変異作用を試験して得られた下記3点を紹介。

  1. 賀茂なす、鹿ケ谷かぼちゃ、桂うり、伏見とうがらしなどの京野菜抽出成分が、それぞれに対応する一般品種よりも生物的抗変異作用が強く含有量が多かった。
  2. 一般普及種の大根よりも京大根の生物的抗変異原性が強く、その活性主体は大根特有の辛味成分である4-メチルチオ-3-ブテニルイソチオシアネート(MTBITC)であった。
  3. 伏見とうがらしの水溶性画分は、ヒト細胞に対する紫外線誘発DNA損傷の修復を促進させる作用があった。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jems/26/3/26_3_259/_pdf
中村考志,松尾友明,岡本繁久,友兼泉,森俊雄,佐藤健司,大槻耕三,環境変異原研究, 26:259-264(〔日本環境変異原学会〕第15回公開シンポジウム 食べ物によるがん予防戦略を考える--生活環境中の植物成分の抗変異・抗発がん作用とそのメカニズム)(2004)

低カロリー性

低カロリーな桂うりのデザートで血糖値上昇抑制

 桂うりの完熟果は、メロンのような芳醇な甘い香りを持つにもかかわらず、食べてみるとほとんど甘みが無く、糖分・カロリーが低いという特徴があります。そこで、低カロリー甘味料と組み合わせることにより、糖分やカロリー摂取を気にされる方でも安心して食べていただけるデザートへの利用が検討されています。

 健常者10人が「グルコース」、「らいでんレッドメロン」、「桂うり+パルスイート(低カロリー甘味料)」を摂取した後、血糖値を測定したところ、摂取後30分で「グルコース」や「らいでんレッドメロン」の血糖値は急速に上昇しましたが、「桂ウリ+パルスイート」ではほとんど上昇しませんでした。

 

詳細情報

桂ウリ果実の成分と熟度の関係とその特徴を活かした利用方法の検討

http://jsbba.bioweb.ne.jp/jsbba_db/download_pdf.php?p_code=3J15p11&pdf=2012
佐々木梓沙、中村考志、朴恩榮、佐藤健司、城田浩治、末留昇、重田友明、岡本繁久、松尾友明,日本農芸化学会大会講演要旨(2012)